歌花史庵 かかしあん

繪子譚日日新聞 : お話

「片栗村の娘たち」

はじまりはじまりー
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むかしむかしあるところに
片栗と呼ばれる村がありました。

ここの娘たちはみな気立てが良く、器量良し。

遠くの町や村から、嫁に欲しい
養女に欲しいと云う招きが絶えませんでした。

しかし、片栗村の娘たちはみな
生まれながらにして、嫁ぐ相手が決まっているのでした。
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相手は誰かと尋ねられれば
みなの答えは
「蟻さん」

よそのひとたちは、これを聞くと一様に眉をひそめ
「蟻なんかに嫁ぐより、うちにおいで」
と、半ば強引に娘たちを連れてゆくのでした。
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よそへ嫁いだ娘たちは、それはそれは大事にされ
嫁いだ月は、美しい姿を披露し、家族も心を癒されるのですが
すぐに老婆のようにしわしわになり、みながみな
赤子を産むこともないのでした。
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それでも、あの美しい嫁がまた欲しい。
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毎年毎年、娘たちは連れて行かれ
片栗村には遂に、数人の娘しかいなくなりました。

ある時、娘のひとりに一目惚れをした青年が
「俺の村へおいで」
と求婚しました。
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凛々しく優しい青年に、娘は恋をしましたが
それでもやはり、涙を流して断りました。

よそへ行けない理由は、青年には判りませんでしたが
諦めきれない彼は、自分が片栗村に住むことを決めました。

雪が溶け、春も本番になる頃、娘はよそへ嫁いだ子らと同じように
老婆のように萎れてしまいました。
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青年は嘆きましたが、まだ命を宿していることを知り
変わらず愛することを誓ったのでした。

夏が終わる頃、娘の元に訪れたのは
一匹の蟻。

もはや小さな塊のようになってしまった娘を
蟻は運んで行こうとしました。

青年はいきり立って言いました。
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「この娘は俺の妻だ。
お前なんかには連れて行かせない」

蟻は毅然として答えました。

「旦那、この村の娘たちは
地上で生き続けることは出来やせん。

あっしらは、この娘たちに飯を作ってもらう代わりに
地中深くに運ぶんですよ。

そう云う決まりがあるんでやす。
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もし、旦那の気持ちが本物なら
あっしらの家の上に七年後
この子が再び元の姿で、現れるのをお待ちなさい」

青年は半信半疑でしたが、その時、最愛の娘の声が聴こえたのでした。
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「七年も、待って下さいとは申せません。
けれども、もしお待ち戴けるなら
七年後に必ず、愛して下さった姿でお目にかかりましょう」

か細い娘の声を聴いた青年は、蟻の言葉を信じる気になりました。
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そして、他の娘たちも、よそへ行くことを嫌がり
蟻に嫁ぐことを望んでいることを知ると
娘たちをかばってやるようになったのです。
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それから七年。

一輪の片栗が花咲きました。
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どうやら蟻の巣の近くのようです。

周りには、仲間の花が咲き乱れ
少し離れた所から、立派な紳士が
胸の膨らむ思いで、花たちを眺めているのでした。


おしまい

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スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)
春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、あとは地下で過ごす一連の草花の総称。

カタクリもそのひとつ。

雪解けの頃に地上に顔を出し、秋までの間、光合成をする。

そうして栄養を蓄えた種には、エライオソームと云う
アリが好む物質が含まれており、アリに拾われることにより
生育地を広げる。

数少ないカタクリの群生地は、長い年月を経て
自然が作り上げたもの。


日本の主なスプリング・エフェメラルは

キンポウゲ科
キクザキイチゲ・ユキワリイチゲ・アズマイチゲ・イチリンソウ・ニリンソウなどのイチリンソウ属
フクジュソウ・セツブンソウ

ケシ科
エゾエンゴサク・ヤマエンゴサク・ムラサキケマン

ユリ科
カタクリ・ショウジョウバカマ・ヒロハアマナ

(wikiより)

撮影:'09.04.28八ヶ岳倶楽部 Canon EOS Kiss Digital X
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by ekoekolove | 2009-05-08 18:18 | 繪子譚日日新聞